店主のひとりごと

かれこれ5年も前のことになる。店主のやってるThe Deadvikingsというバンドが、ヨーロッパ4カ国、23都市を周るライブツアーをすることになった。

フランス、ドイツ、イタリア、ベルギーを金髪モヒカンのパンクスをドライバーに従えて、機材一式車に積んで街から街へと移動。

ツアーの日々はだいたいいっつも同じで、寄り道なんかしながら夕方頃にベニューに到着。だいたいちょっと広めのパブやバーで演奏することになっており、到着するなりビールで乾杯(もちろんタダで!ミュージシャンだから!)。一服したら機材を積み込みサウンドチェック。それが終わると賄いが出てくるのでそれを食べながらまた乾杯。日本と違ってライブスタートが9時とか10時。することないからやっぱり乾杯..。ライブが終わったらそのままお客さんも含めて乾杯….。で、深夜、だいたいパブのオーナーや、ライブを仕切っている人の家に泊めてもらう。翌朝目覚めるとまた車に乗り込んで、寄り道なんかしながら夕方頃に…。てな毎日がおよそ一ヶ月続いた。

ヨーロッパのバーなんかだと、入場料も本当にビール一杯くらいの値段で、日本のライブハウスほど敷居が高くなくて気軽にふらっと立ち寄れる感覚も手伝ってか、全く無名のローカルバンドであるはずの我々がどこへ行っても数十人くらいはお客さんがいて(いや、正直5人てこともあり、逆に多い時は数百人てことも、まあ、とにかく)、客層も老若男女幅広く、それこそ革ジャンを着たおばあちゃんもいたし、親子連れだっていたし、頭ツンツンのパンクスも勿論いたし。
肝心のライブはと言うと、国民性というのもあるのかもしれないけど、お客さん自身がそもそもライブを楽しむ気満々でやってきているので、いつも大盛り上がり。
バンドは演奏できてタダでビール飲んでギャラまでもらえて、お客さんは自由に楽しんで、お店はきっちり儲かって、みんなハッピー、という非常にシンプルな構図がそこでは成立していた。勿論、長い時間をかけて育まれてきた文化がそこにはあったからこそなのだろうけど。
大げさに言うなら、ロックンロールが生活の一部になっているというか、文化として根付いているというか。ある特定の人のためものではなくて、もっと気軽に、多分カラオケ行くくらいの感覚でライブに行くような空気。
ローカルシーンや地域に根ざしたカルチャーがあって、フラットな気持ちで、ふらっとライブを見に来れる感覚。

こんな場所が日本もあったらなあ…。

あるやん!

当時、神戸元町高架下にある商店街、通称モトコーの三番街にBee’s Knees Barというバーがあって、日本語もろくに話せない(いや、実際はケッコー話せると言う説を支持する人もちらほら)カナダ人のクリスが一人でやっていたそのバーの2階では、夜な夜な地元のガレージバンドや、時には海外からのツアーバンドまでが演奏していて、その狭い箱には音楽を愛する人々が溢れていた。もちろん我々のバンドもそこでライブさせてもらっていたけれど、ヨーロッパのベニューを見てようやく、本当の意味でクリスがやろうとしていることが理解できた。と思う。

オーバースペックなライブハウスに高いレンタル代やノルマを払ってライブをしなくても、もっとラフな感じで音楽を楽しめる場所が必要だ。お客さんも安い値段で楽しめるし、ミュージシャンとコミュニケーション取れるし。バンドも赤字を出さずにライブできるし、PAに頼らずに自分の出音に責任を持って演奏しなければならないから演奏も上手くなると思う。実際、海外のツアーバンドなんか見ると、PAシステムを通さない生音で演奏してもちゃんとしたバランスで鳴っていることが多い。
もちろんいつだってライブハウスの存在意義はあるし、そこはケースバイケースで、選択肢が増えればいいだけの話。

えーと、その後クリスはカナダに帰ることになって、結局Bee’s Knees Barもなくなってしまうのだけれど、ひょんなことから同じ場所にハンバーガー屋ができて、そこの二階ではやはり夜な夜なライブが繰り広げられているという。

クリスはだいたい夕方6時にやってきて12時、早い時には10時過ぎくらいに帰るというスタイルで、そのくせ全然儲からないと嘆いていたのを知っていた店主は昼間から開けてハンバーガーをせっせと焼きながらやりくりしているそうです。

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